
よりによって何でこんな日になっちゃったんだろう・・・
私は降り続く雪を見ながら絶望的な気持ちになった。
日本中で記録的な大雪になり何もかも大混乱になった週末。
私達は結婚式を挙げるのだ。
電車も動かない、道も大渋滞。
式場もどこまで対応してもらえるんだろうか。
何もかもが不安だった。
けれど、私たちはこの日絶対に結婚式を挙げる。
父が倒れたのは3ヶ月前だった。突然だった。
それから私達家族と父の闘病生活は始まった。
結婚が決まってから父とは何かにつけて衝突していた。
もうすぐこの家を出るのだから、親孝行しなくちゃ。
そう思う心とは裏腹に父に対して素直になれない自分。
いつも機嫌の悪い父。
父は一人娘の私を嫁に出すのが寂しいのだと母が言った。
素直になれないのは親子だね、と。
しかし、父の病気で一変した。
私は何で今までもっと優しい言葉をかけられなかったんだろう。
当たり前に元気だった親がそうでなくなった時
今やるべきことは素直になることなのだと思い知った。
そうして私達似た者親子はやっとお互いに
いつも笑って話せるようになっていた。
父は私の結婚を喜んでくれ、
結婚式に出席することを励みに病気と闘ってきた。
だから、結婚式はどうしても今日でないとだめなんだ。
彼はそんな私の気持ちを理解してくれて同じ心で
今日に臨んでくれている。
朝7時過ぎ、彼から連絡が入る。
6時に出てきたけれど、渋滞で車が全く動かない。
ここから歩く!と。歩くって・・・
普通に歩いても5時間以上かかる。
でも今の私には全てを信じて待つしかない。
挙式は11時からの予定だった。
もう12時になろうとしている。
「新郎様が到着されました!」声が響く。
一晩中雪かきをして真っ赤に雪焼けをした顔を
笑顔でくしゃくしゃにしたスタッフさん達に囲まれて
雪だるまの様になった彼がやって来た。
オーラというものがあるならば、彼は間違いなく
キラキラとまぶしい輝きをまとって私の前に現れた。
お父さん!私の旦那さんになる人はすごいでしょ!
これが愛の力だよ!
結局3時間遅れで式は始まった。
前日から近くのホテルに泊まっていた父をはじめ家族も参列し、
来られなかったゲストの方はいらしたけれど
無事終えることが出来た。
こんなに思い出深い結婚式はあるだろうか。
折れそうになる心を彼や家族、式場のスタッフの皆さんに支えられ、
この日を最高の日にしてもらった。
父にも今までで一番のプレゼントが出来たと思っている。
けれど、本当に一番幸せなプレゼントをもらったのは私。
この凄かった日からスタートする人生は
ちょっとやそっとでは負けないよね。

お二人の強い思いに応えたいと私達スタッフも出来る限りのことをさせて頂きました。一日ひと組完全貸切だから突然のハプニングにも対応出来ました。けれど一番はお二人の強い絆があってこそ実現した一日だったと思っています。